NXPは、組込みおよびIoTアプリケーションにおいて、革新的なアイデアを具現化するために必要なソフトウェア、ツール、機器を提供し、開発者の力になることを使命としています。ZephyrによってRTOSの現状がどのように変わっているのか、またNXPによるこのプロジェクトへの継続的な投資がなぜ組込みシステムの未来の形成に役立つのかを、深く掘り下げて解説します。
Zephyrは、リソースに制約のあるデバイス向けに設計されたオープンソースのリアルタイム・オペレーティング・システム (RTOS) です。高度な設定が可能で、複数のアーキテクチャに対応し、チップ・メーカー、ソフトウェア会社、OEM、研修機関、大学などで構成されるコミュニティからの支持により、急成長を遂げています。
Zephyrは、単なるカーネルではなく、ネットワーク、ワイヤレス通信、およびテスト・インフラ向けの堅牢なミドルウェアを含んでいます。その拡張性により、ベーシックなセンサ・ノードから複雑なIoTデバイスまで、あらゆるデバイスに最適です。
Zephyrには、50近くの公式メンバー企業に加えて、メンバー以外の貢献者も参画しており、ソフトウェアへの投資に安全性を確保しつつもベンダーの縛りがない柔軟性を求める開発者の間で、主流なRTOSプラットフォームとしての地位を急速に確立しています。
NXPは、このプロジェクトの設立メンバーの一社として、2015年の立ち上げ当初からZephyrに関わっています。早期にこの決断を下したことは、後に優れた戦略であったことが証明されています。事実、Zephyrを支持するお客様がここ数年で急激に増加しています。現在では、お客様との会話の中で日常的にZephyrに関する質問を受けています。
この勢いは、幅広いユース・ケースに対応する柔軟でセキュアかつスケーラブルなソフトウェア・プラットフォームへのニーズの高まりによって加速しています。近年、とりわけ世界中のサプライ・チェーンが困難を経験した後では、多くの企業がソフトウェア・スタックの統合に取り組み、断片化された開発環境から脱却しようとしています。Zephyrは、オープンソースの基盤とクロスプラットフォームへの対応により、この需要にまさしく適合しています。
Zephyr RTOSは、NXPのイノベーションとともにエッジ・コンピューティングに新たな波を起こします。詳細については、最新のEdgeVerse Techcastのエピソード をご視聴ください。
NXPは、いくつかの主だった方法でZephyrプロジェクト に貢献しています。NXPのエンジニアリング・チームは、自社のデバイスへのサポートの追加にとどまらず、上流開発においても積極的な役割を果たしています。コードの強化に貢献し、Bluetooth Classicなどの機能の維持者としての役割を担うとともに、プロジェクトのロードマップの指針を定めるワーキング・グループにも参加しています。
Zephyrプロジェクトの2025年3月のリリースでは、NXPはトップ3の貢献者にランクされており、Zephyrの発展に深く関わっていることが浮き彫りになりました。
Zephyrは、フラッシュベースのMCUからi.MX RTシリーズなどのクロスオーバー・マイクロコントローラまで、NXPの広範な組込みプロセッサと完全に整合性が取れています。開発者に統合プラットフォームを提供し、アーキテクチャやハードウェア・ペリフェラルが大きく異なるデバイス間でのソフトウェアの再利用を可能にします。
Zephyrの標準化されたAPIを使用すると、大規模なリファクタリングを必要とせずに、異なるデバイス・ファミリ間でアプリケーションを簡単に移植できるようになります。加えて、開発者は、Linuxコミュニティで既に広く普及しているデバイス・ツリーとkconfigを使用することで、ドライバをハードウェアにバインドし、アプリケーションのソース・コードを編集するのではなく設定ファイルによって、ソフトウェアの機能を有効化することができます。たとえ最初はこれらの概念に馴染みがなくても、大多数の開発者は、それらに慣れてしまえばコードの移植を大幅に簡素化できるようになり、長期的にはより保守性が高くスケーラブルなコードベースが実現します。
NXPは、開発環境をさらに合理化するために、MCUXpresso for Visual Studio CodeにZephyrのサポートを組み込み、開発者にパワフルで使い慣れた作業環境を提供しています。Zephyr環境の迅速なセットアップを実現するMCUXpressoインストーラと組み合わせることで、NXPのハードウェアでのZephyrベースのアプリケーションの開発をかつてないほど簡単に開始することができます。
この統合ツールは、開発者エクスペリエンスを向上させ、高度な組込み開発をより身近なものにするというNXPのコミットメントを反映しており、特に初めてZephyrを導入するユーザーのことを考慮しています。
急速に変化している組込み開発の世界において、Zephyrは、現代的な連携重視のアプローチによってリアルタイム・ソフトウェアの世界に新たな道を拓きます。Zephyrは、その拡大し続けるコミュニティ、強力なアーキテクチャ、およびNXPを含む業界のリーダーからの価値ある貢献により、世界中の開発者に最も選ばれるRTOSになりうると位置付けられています。
Brendon Sladeは、汎用MCUエコシステム・チームの責任者です。DSPおよびマイクロコントローラ業界において、25年以上にわたりインダストリアル、モバイル、自動車、音声通信、音声処理の各市場向け製品の設計担当、アプリケーション担当、テクニカル・マーケティング担当として従事してきました。Brendon Sladeが率いるチームはNXPのArm® Cortex ®-MベースのMCUのイネーブルメントに重点的に取り組んでおり、パートナー各社やNXPの社内ソフトウェア・チームと連携して、補完的な開発ツールとソフトウェア・ソリューションを定義し提供しています。英国プリマス大学卒業。カリフォルニア州サニーベール在住。デバッグ技術の特許を取得しています。